腎機能の数値に含まれるもの
腎臓の血液検査では、クレアチニン(Cr)と尿素窒素(BUN、UNと書かれることもあります)を測り、クレアチニンから推定糸球体ろ過量、つまりeGFRを計算します。病院の採血では、腎臓がバランスを保っているナトリウムやカリウムなどの電解質が並ぶこともあります。項目は検査機関によって違うので、手元の検査結果の用紙に印刷された項目を確かめてください。
健康診断では少し事情が違います。特定健診で必須なのは尿たんぱくで、血清クレアチニンは医師の判断で行う「詳細な健診」の項目です。対象は、血圧が130/85 mmHg以上、または空腹時血糖が100 mg/dL以上やHbA1cが5.6%以上の人などとされています。健診の結果にeGFRがないのは、見落としではなくこの仕組みのためかもしれません。
これらの項目は1つずつではなく、まとめて読みます。クレアチニンとeGFRはろ過の力を、尿素窒素はクレアチニンとの比較で、電解質は腎臓が保っているバランスを表します。
クレアチニンは腎臓だけでなく筋肉も映す
クレアチニンは筋肉から出る老廃物で、腎臓から尿へ捨てられます。そのため血液中の量は、腎臓がどれだけこし取っているかと、筋肉がどれだけつくっているかの2つで決まります。
後者を知っておくと、矛盾して見える結果が理解できます。体格のよい若い男性と小柄な高齢の女性では、腎臓の働きが同じでもクレアチニンは同じになりません。国際的な腎臓病のガイドラインは、筋肉量がとても多いか少ないこと、筋トレや激しい運動、高たんぱくの食事やクレアチンのサプリメント、菜食や低たんぱくの食事を、腎臓に変化がなくてもクレアチニンを動かす要因として挙げています。
1回の食事でも変わります。加熱した肉や魚の食事1回でクレアチニンが約0.23 mg/dL上がり、eGFRが約20下がることがあり、そうした食事から12時間以上あけると影響を避けられます。
クレアチニンの基準範囲が男女で違うのも、筋肉量が違うからです。筋肉の少ない人で範囲の上限に近い値は、筋肉の多い人の同じ値より注意して見る価値があります。
eGFRは測った値ではなく、計算した値
検査結果のeGFRは、直接測った数値ではありません。クレアチニンに年齢と性別を組み合わせて式で計算したもので、その式の誤差も含んでいます。日本では日本人のデータからつくられた式が使われ、eGFR=194×クレアチニン^-1.094×年齢^-0.287(女性は×0.739)です。欧米の検査機関は別の式を使うため、海外で受けた検査の値とはそのまま比べられません。
式に年齢が入っているので、クレアチニンが同じでも年齢が上がるほどeGFRは低く計算されます。数値は体の大きさを標準的な体格(体表面積1.73 m²)にそろえたもので、あなた自身の体格に合わせたものではありません。つまりeGFRは、変化の傾向を追うのは得意でも、小数点以下の1回の値を読むのは苦手です。筋肉量がふつうと大きく違う人では、シスタチンCという別の指標で確かめることがあります。
検査機関や計算式が違う2つの値は、そのまま比べられません。検査機関を変えたときにグラフに段差ができたら、それは腎臓ではなく方法の違いによるものです。
eGFRはいくつから注意?
日本の特定健診では、eGFRが60 mL/分/1.73 m²未満で保健指導、45未満ですぐに医療機関を受診するよう勧めることになっています。尿たんぱくが1+以上のときも、eGFRにかかわらず受診が勧められます。
ここで基準範囲がいちばん誤解を生みます。どの範囲も健康な人の20人に1人ほどを外しますし、eGFRは年齢とともに低く計算されるので、70歳のeGFR 65と25歳のeGFR 65は意味が違います。
1回の結果は慢性腎臓病ではない
1回だけ低いeGFRは「所見」であって「診断」ではありません。慢性腎臓病(CKD)は、eGFR 60未満や尿たんぱく・アルブミン尿の異常が3か月以上続くことで診断されます。以前から続いていた証拠がない限り、再検査で確かめるのが原則です。
その違いは数字にも表れます。日本の大規模な健診データを使った推計では、1年分の検査だけで数えた慢性腎臓病の人は2015年に約1,480万人でしたが、2年続けて異常があった人に限ると約1,020万人でした。1回の結果だけで判断すると、実際より多く見積もってしまうのです。
逆も同じくらい大切です。早い段階の腎臓病は多く、症状がありません。国際的なガイドラインは、リスクのある人には尿のアルブミンとeGFRの両方を調べるよう勧めています。尿の検査は、血液のどの項目にもない情報を加えます。糖尿病や高血圧がある人は、腎臓のチェックに尿検査が入っているか確認してください。
- これは初めての低い値か?1回目の値は再検査します。数か月あけた複数回の採血で同じ値が続いて、初めて傾向といえます。
- 尿は調べたか?尿のアルブミンやたんぱくは、eGFRがまだ正常に見えるうちから腎臓の傷みを示すことがあります。
尿素窒素(BUN)とほかの項目
尿素窒素は腎臓の働きが落ちたときだけでなく、脱水のときや高たんぱくの食事、消化管からの出血でも上がります。単独ではなくクレアチニンと並べて読み、2つの関係そのものがどちらか一方にない情報を持っています。
同じ採血に並ぶ電解質は、腎臓が保っているバランスを表します。ナトリウム、カリウム、クロールはよく使われるいくつかの薬を含むさまざまな理由で動くので、ひとまとまりで読みます。