生化学検査は、臓器ごとの小さなグループ
生化学検査は、採血した血液を遠心分離して赤血球や白血球などの細胞を除き、残った液体(血清)の中の成分を化学的に測る検査です。調べる臓器によって項目が変わり、電解質、酵素、たんぱく、糖、脂質などをまとめて測ります。結果では、おおむね次のようなグループに分かれます。電解質(Na、K、Cl、Ca)、腎臓(BUN、クレアチニン、eGFR、尿酸)、肝臓(AST、ALT、γ-GT、ALP、総ビリルビン、総蛋白、アルブミン)、糖代謝(血糖、HbA1c)、そして脂質です。
これらの項目は、それぞれ独立した判定ではありません。グループごとに読むのは整理のためではなく、そうしないと数字が意味を持たないからです。クレアチニンは尿素窒素と、アルブミンは総蛋白と一緒に読みます。カルシウムもアルブミンと一緒に見ます。血液中のカルシウムの多くはアルブミンにくっついて運ばれるので、アルブミンが低いと、カルシウムに問題がなくてもカルシウムの値が下がって見えるためです。
ALPは骨と肝臓が共有する保守作業員のような酵素で、高くても、どちらが忙しいのかはそれだけではわかりません。これも肝臓の項目をまとめて読む理由の1つです。なお日本では2020年4月から、ALPの測定法が国際標準のIFCC法に切り替わり、数値の大きさが以前とは変わっています。
生化学検査と血液一般検査(血算)の違い
生化学検査は、血算とよく取り違えられます。同じ日に一緒に採血されることが多いからです。けれども答えている問いは別物です。血算は血球を数え、生化学検査は血液の液体部分に溶けている成分を測ります。採血管も別で、生化学検査では血液を遠心分離して血清を取り出してから測定します。
健診によって、生化学検査に含まれる項目の数は違います。会社の定期健診では肝機能・脂質・血糖が中心で、人間ドックでは腎臓や尿酸などの項目が加わります。結果に載っている行が少なくても、項目が抜けたのではなく、頼まれた検査の範囲が違うだけです。
- 電解質ナトリウム、カリウム、クロール、カルシウムは、体の水分とミネラルのバランスを表します。水分、薬、採血後の扱いのすべてが数値を動かします。
- 腎臓尿素窒素とクレアチニン、そしてクレアチニンから計算するeGFR。1つずつではなく、組として読みます。
- 肝臓肝臓の細胞を表すASTとALT、胆汁の流れを表すγ-GT・ALP・ビリルビン、肝臓が作るアルブミンと総蛋白。
- 血糖とカルシウム食事ですぐに変わる血糖と、アルブミンと並べて初めて意味を持つカルシウム。
血糖と、空腹で受けるべきかどうか
生化学検査は空腹で受ける必要がある?多くの場合はそうで、理由は血糖です。食事ですぐに動くのは血糖で、電解質や肝臓の項目は食事の影響をあまり受けません。検査室は、案内どおりに受けたものとして結果を判断するので、自分の検査の案内に従ってください。
本当に空腹で採血した場合、日本糖尿病学会の基準では、空腹時血糖126 mg/dL以上を「糖尿病型」、110 mg/dL未満を正常型としています。厚生労働省の健診の判定では、100 mg/dL以上で保健指導、126 mg/dL以上で受診勧奨の対象です。1回の高い値だけでは診断にならず、別の日の再検査で確かめます。朝食のあとに採った血糖は、これらの基準でそのまま読むことはできません。くわしくは空腹時の採血のページをご覧ください。
カリウムは、いちばん「間違いやすい」項目
カリウムは、赤血球の中に、まわりの血漿の約30倍もの濃さで入っています。腕から分析装置までのどこかで赤血球が少し壊れるだけで、体には何も起きていないのに、採血管の中のカリウムは上がります。検査室は溶血の程度を数値で記録しており、26の生化学項目を調べた検証研究では、溶血でカリウムのほか、AST、LD、ビリルビン、鉄が上がり、血糖とALTが下がることが確かめられています。
原因は機械的で、ありふれたものです。駆血帯の巻きすぎ、採血中に手を握ったり開いたりすること、細い針、採血管を強く振ること、遠心分離までの時間です。欧州の採血の推奨は、血液が流れ始めたら駆血帯をすぐに外し、手を握ったり開いたりしないよう求めています。日本の共用基準範囲では、カリウムは3.6〜4.8 mEq/Lです。
ほかの項目がふつうなのにカリウムだけが少し高いなら、最初に考えるのは退屈な理由で、次の一手はたいてい治療ではなく採血のやり直しです。
ナトリウムが低いのは、薬のせいのことも多い
軽い低ナトリウムは、ふだんの血液検査でよく見られる異常の1つで、血圧の治療を受けている人では、その理由が自分の処方薬にあることも少なくありません。高血圧の治療を新しく始めた2,613人を追った研究では、サイアザイド系利尿薬を飲み続けた人の約3割で、ナトリウムが130 mmol/L以下になりました。130 mEq/Lと同じ値です。日本の共用基準範囲は138〜145 mEq/Lです。
だからといって、薬をやめる理由にはなりません。数値を薬の一覧と並べて読み、その後どうするかは処方した医師が決める、という意味です。
同じ考え方は生化学検査全体に当てはまります。多くの項目は、飲んでいる薬、飲んだもの、針を刺すまでどれくらい座っていたかで動きます。
eGFRは測った値ではなく、計算した推定値
クレアチニンの下に書かれたeGFRは、実際に測られたものではありません。クレアチニン、年齢、性別から式で計算したもので、式ならではの誤差を含みます。
日本の結果のeGFRは、日本人のデータから作られた推算式で計算されています。この式は、イヌリンという物質で実際に測ったろ過量と比べて作られ、女性では係数0.739をかけて補正します。海外で使われる式とは計算が違うので、海外で受けた検査の値とは単純に比べられません。
厚生労働省の健診の判定では、eGFRが60未満で保健指導、45未満で受診勧奨の対象です。1回だけ境目を下回った値は、結論ではなく再検査のきっかけです。
生化学検査で異常値が出るのはなぜ?
項目が十数行あり、どの基準範囲も健康な人の20人に1人を外に出す作りになっているので、どこかに印がつくのは珍しいことではありません。役に立つ問いは、同じグループの仲間の項目と合っているか、どれだけ外れているか、そしてほかに何があったか、つまり薬、食べたものや飲んだもの、採血の状況です。
そのため、ひとつだけの軽い異常に対する次の一手は、たいてい治療ではなく再検査です。きちんと採り直した2回目でも異常が続く場合や、同じグループの複数の項目がそろって動いている場合に、くわしく調べることになります。医師は、あなたの病歴や薬と合わせて判断します。