ガイド2・検査結果を手元に

血液検査の種類:主な検査グループと、それぞれでわかること

血液検査の主な種類は、血算、生化学検査、脂質、肝臓、腎臓、甲状腺、鉄といったグループです。それぞれが何を測り、何に答えないのかをまとめました。

主なデータ

251,891人
コクランのレビューの参加者。一般的な健康診断で死亡は減りませんでした。[1]
+20%
健診を勧められた人に、6年間でついた新しい診断の増え方。結果はよくなりませんでした。[2]
175 mg/dL
随時の採血で中性脂肪を高いと判断する基準。2022年に初めて設けられました。[4]
2020年4月
ALPとLDの測定法が国際標準のIFCC法に切り替わった時期。[6]

血液検査は「リスト」ではなく「グループ」

30行並んだ検査結果も、実際にはいくつかの小さなグループの集まりです。グループの中の項目は、互いに見比べて読むように作られています。ヘモグロビンはMCVやフェリチンと、ALTはASTやγ-GTと、クレアチニンはeGFRや水分のとり方と一緒に見ます。

だから検査結果を上から順に読んでもうまくいかないことが多く、このガイドの各ページは1つの項目ではなく、1つのグループを説明しています。

1つの数値だけでは、ほとんど何も言えない

基準範囲を外れた1つの数値だけを見るのは、間違った結論へのいちばんの近道です。同じようにALTが高めでも、かぜをひいたあと、食べすぎた翌日、新しい薬を飲み始めたあとでは、意味が違います。

そこでこのガイドの各ページは、グループから始めます。どの項目でできていて、どれから読み、どんな組み合わせなら医師に質問する価値があるのかを説明します。

健診の血液検査でわかること、わからないこと

健診の血液検査は、血球、血糖、腎臓、肝臓、甲状腺、脂質、鉄といった大きなしくみの「今日の様子」を表します。がんを見つけるための検査ではなく、ほとんどの感染症も調べず、ビタミンDやB12も頼まなければ測られません。

項目を増やしても、守られるわけではありません。コクランの系統的レビューは、17のランダム化試験、251,891人を調べ、大人に勧める一般的な健康診断では、全体の死亡、がんによる死亡、心臓や血管の病気による死亡のどれも減らなかったと報告しています。試験の1つでは、健診を勧められた人に6年間で新しい診断が20%多くつきましたが、結果は変わりませんでした。

医学的な理由ではなく、技術的な理由で揺れやすい項目もあります。代表はカリウムです。採血の途中で壊れた赤血球からカリウムが漏れ出して結果を押し上げるため、検査室は溶血の程度を測り、一定以上の検体は使わないようにしています。

最近、読み方が変わった4つの項目

次の4つは、数年前とは読み方が変わっています。新しい検査結果を古い結果と比べるときに、知っておきたい点です。

  1. 脂質日本動脈硬化学会の2022年版ガイドラインは、空腹かどうかわからない随時の採血での中性脂肪に、175 mg/dL以上という基準を初めて設けました。空腹時の基準は150 mg/dL以上のままです。
  2. 腎臓日本の検査結果のeGFRは、クレアチニンと年齢・性別から日本人向けの式で計算されています。海外で使われる式とは計算が違うため、海外の結果とは単純に比べられません。
  3. ALPとLD2020年4月から、日本の検査室ではALPとLDの測定法が、日本独自のJSCC法から国際標準のIFCC法に切り替わりました。基準範囲も変わり、ALPの共用基準範囲は38〜113 U/Lです。切り替え前の結果とは数字の大きさが違います。
  4. 甲状腺TSHが高めでFT4が正常な場合、ホルモンの補充が役立つという証拠は見つからなかったと、2023年のレビューは述べています。年齢、症状、TSHの値で判断します。

どこから読むか

検査結果が長い場合は、まず健康診断の血液検査のガイドから始めてください。グループどうしのつながりと、健診でわかること・わからないことを説明しています。そのあとで、印のついた項目があるグループへ進みます。血算、生化学検査、脂質、肝臓、腎臓、甲状腺、鉄の順に並んでいます。

このガイドの記事

基本記事健康診断の血液検査で何がわかる?項目の全体像と、わからないこと「健康診断の血液検査」という1つの検査があるわけではありません。手元の検査結果に並んでいるのは、いくつかの小さな検査グループの集まりです。1行ずつではなく、グループごとに読むものです。記事血算(CBC)とは?3つの血球の見方と、受診の目安3種類の血球の数と大きさを測る検査です。血算の価値は、項目どうしの関係の中にあります。上から1行ずつ読むと、肝心なところを見落とします。記事生化学検査とは?項目とわかること、血液一般検査との違いナトリウムの値は、塩分をどれだけとったかを教えてくれるわけではありません。体の中の塩分に対して水分がどれだけあるかを表すので、ナトリウムが低いときは、たいてい水分の問題です。記事脂質検査とは?LDL・HDL・中性脂肪の見方と、引っかかったときの考え方4つか5つの項目のうち、1つは基準範囲ではなく「目標値」で読むものです。脂質検査を読むとは、どれがどちらなのかを知ることです。記事肝機能の数値が高いと言われたら:AST・ALT・γ-GTPの見方と次の一歩肝臓を大きな工場にたとえると、健康診断の肝機能の数値の多くは、工場の生産量ではなく、どこかで小さな故障が起きたときに鳴る警報の音量です。AST・ALT・γ-GTPは「働きの良さ」ではなく「細胞の傷み」を映しています。記事甲状腺の血液検査でわかること:TSHが高いとき、低いときの読み方TSHは甲状腺の働きを調節するサーモスタットのようなホルモンで、甲状腺ホルモンそのものではありません。しかも甲状腺とは逆の向きに動きます。この1点がわかれば、甲状腺の血液検査の多くは自然に読めるようになります。記事腎機能の数値の見方:eGFRはいくつから注意? 1回の結果で決めない理由腎臓は血液をきれいにするフィルターのような臓器です。クレアチニンはそのフィルターでこし取られるはずの老廃物、eGFRはそこから計算した推定値で、どちらも1回の結果だけでは診断になりません。記事貧血の検査でわかること:ヘモグロビンが正常でも鉄不足(隠れ貧血)はあるフェリチンは体の鉄の貯金で、後のためにしまっておく金庫のようなものです。血清鉄やトランスフェリン飽和度は今まさに流れている鉄を表し、鉄不足とそうでない状態を分ける境目は、専門家の間でも本当に意見が分かれています。

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出典

診療ガイドライン、合意声明、査読を受けた研究です。このページの数値はすべて、いずれかを出典としています。査読前の論文(プレプリント)は引用していません。

  1. 系統的レビュー

    General health checks in adults for reducing morbidity and mortality from disease

    Cochrane Database of Systematic Reviews · 2019doi:10.1002/14651858.CD009009.pub3

  2. 系統的レビュー

    General health checks in adults for reducing morbidity and mortality from disease: Cochrane systematic review and meta-analysis

    BMJ · 2012doi:10.1136/bmj.e7191

  3. 検証研究

    Effects of the hemolytic index on the test results of a dry chemistry analyzer and a verification of the hemolytic interference threshold

    Annals of Palliative Medicine · 2022doi:10.21037/apm-22-292

  4. 診療ガイドライン

    Japan Atherosclerosis Society (JAS) Guidelines for Prevention of Atherosclerotic Cardiovascular Diseases 2022(動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版)

    Journal of Atherosclerosis and Thrombosis(日本動脈硬化学会) · 2023doi:10.5551/jat.GL2022

  5. 診断精度研究

    Revised equations for estimated GFR from serum creatinine in Japan(日本人のGFR推算式)

    American Journal of Kidney Diseases · 2009doi:10.1053/j.ajkd.2008.12.034

  6. 測定法の比較研究(日本の測定法変更の記載)

    Comparison of Analytical Values after Changing to the International Standardized Method for Lactate Dehydrogenase and Alkaline Phosphatase Measurements in Mouse and Rat

    Veterinary Sciences · 2022doi:10.3390/vetsci9110595

  7. 病院の基準範囲表

    臨床検査基準範囲 第23版(JCCLS共用基準範囲を採用)

    群馬大学医学部附属病院 検査部 · 2025

  8. レビュー

    Subclinical hypothyroidism, outcomes and management guidelines: a narrative review and update of recent literature

    Current Medical Research and Opinion · 2023doi:10.1080/03007995.2023.2165811