脂質検査で測るもの
脂質検査では、総コレステロール、LDLコレステロール、HDLコレステロール、中性脂肪(トリグリセライド)を測ります。多くの結果にはnon-HDLコレステロールも載っています。これは総コレステロールからHDLコレステロールを引いた値で、同じ採血管からの計算であり、追加の検査ではありません。
項目は4つか5つですが、すべて同じように読むわけではありません。中性脂肪とHDLは、ふつうの検査値と同じように読みます。LDLはそうではなく、検査室ではなくあなた自身によって決まる目標と比べて判断されることが多い項目です。
LDLは「範囲」ではなく「目標」
総コレステロール、HDL、中性脂肪は、範囲と比べて読みます。LDLコレステロールは、心臓や血管の病気のリスクに応じた目標と比べます。日本動脈硬化学会の2022年版ガイドラインは、福岡県久山町の住民研究から作られたスコアで、年齢、性別、血圧、糖尿病、喫煙などからリスクを見積もり、目標を決めます。
その目標は、低リスクなら160 mg/dL未満、中リスクなら140 mg/dL未満、高リスクなら120 mg/dL未満です。心筋梗塞などをすでに起こした人では100 mg/dL未満、さらに条件によっては70 mg/dL未満が目標になります。同じLDLでも、ある人には印がつき、別の人にはつかず、どちらの結果も正しい、ということが起こるのはこのためです。
結果にLDLの基準範囲が印刷されていたら、それは検査室の標準の範囲であって、あなたの目標ではありません。あなたに当てはまる数字は、結果用紙ではなく診察の中で決まります。
脂質検査は空腹で受ける必要がある?
日本動脈硬化学会のガイドラインは、脂質の検査を10時間以上の絶食後に採血することを推奨しています。水やお茶など、カロリーのない飲み物はかまいません。一方で、空腹かどうかわからない随時の採血も、最初のふるい分けには使えるとし、2022年版では随時の中性脂肪に175 mg/dL以上という基準を初めて設けました。くわしくは空腹でなくてもよい検査と空腹時の採血のページをご覧ください。
空腹かどうかで違いが出るのは、主に中性脂肪です。欧州の合同声明によると、ふつうの食事のあとの平均的な変化は、中性脂肪で最大約+26 mg/dL、総コレステロールとLDLで約−8 mg/dLで、HDLはほとんど変わりません。
ただし日本の結果では、LDLを計算で出す場合(総コレステロール − HDL − 中性脂肪÷5)は、空腹時の採血でしか使えません。中性脂肪が400 mg/dLを超えるときや随時の採血では、LDLを直接測る方法か、non-HDLコレステロールを使います。自分の検査の案内が空腹を求めていれば、それに従ってください。
項目どうしの関係
中性脂肪は、前日に何をしたかにいちばん左右される項目です。食事のあとに上がり、前の晩のお酒でも上がります。厚生労働省の解説も、中性脂肪は食後に高くなるので空腹で採血しないと正しく測れない、としています。随時の採血で1回だけ高い中性脂肪は、見た目ほどの所見でないことがよくあります。
HDLはゆっくりとしか動かず、食事の影響をあまり受けません。一方で、喫煙や運動不足はHDLを下げます。喫煙の量で分けた研究では、喫煙者は総コレステロール、中性脂肪、LDLが高くHDLが低く、本数の多い人ほどその傾向が強く出ました。
non-HDLコレステロールは、血管の壁にたまりうる粒子が運ぶコレステロールをまとめて表します。厚生労働省の健診の判定では、150 mg/dL以上で保健指導、170 mg/dL以上で受診勧奨の対象です。
結果によって印のつき方が違う理由
脂質の印は、1つの「正常値」で決まるのではなく、どの基準を使うかで変わります。日本動脈硬化学会の診断基準では、LDL 140 mg/dL以上を高LDLコレステロール血症、120〜139 mg/dLを境界域としています。厚生労働省の健診の判定では、LDL 120 mg/dL以上で保健指導、140 mg/dL以上で受診勧奨です。日本人間ドック・予防医療学会の判定区分では、60〜119 mg/dLが基準範囲で、120〜179 mg/dLは要再検査・生活改善、180 mg/dL以上は要精密検査・治療になります。病院の検査室ごとの基準範囲もあり、たとえばある大学病院ではLDLを59〜139 mg/dLとしています。検査室によって数字が違うので、同じ結果が、ある用紙では印つき、別の用紙では印なしになることがあります。
これらの数字は、集団として望ましい水準や生活習慣を見直す目安であって、診断ではありません。厚生労働省も、健診の判定の値は生活習慣の改善が必要とされる目安で、薬を始める基準ではないと説明しています。
脂質検査で引っかかったら、受診の目安は
ほかのリスクがどうであれ、それだけで意味を持つ数字があります。次の場合は、次の健診を待たずに、医師に直接相談する価値があります。
- LDL 180 mg/dL以上厚生労働省の健診の判定では、早めに医療機関を受診するよう示されています。未治療で180 mg/dLを超えるLDLは、遺伝的にコレステロールが高くなる家族性高コレステロール血症を疑う手がかりの1つです。
- 中性脂肪 500 mg/dL以上空腹時でも随時でも、早めの受診が示される値です。300〜499 mg/dLは、生活習慣を改善したうえでの受診が目安です。
- LDL 140〜179 mg/dL生活習慣の改善に取り組んだうえで、医療機関を受診する目安です。目標値は、血圧、糖尿病、喫煙などを合わせたリスクで変わります。
- HDL 40 mg/dL未満低HDLコレステロール血症とされ、心臓病になりやすいことがわかっています。禁煙や有酸素運動で上げることができます。
脂質検査でわからないこと
脂質検査は、動脈そのものの状態を測るものではありません。何年もかけてその状態に影響する物質を測っています。1回の検査は線の上の1つの点で、何回か重ねて初めて意味が見えてきます。
また、心臓や血管のリスクのほかの部分については何も言いません。血圧、喫煙、糖尿病、家族の病歴、年齢は、どの脂質の項目にも写らない重みを持っています。だからこそ、LDLの目標は人によって違うのです。
どのくらいの頻度で受ける?
会社の定期健康診断では、血中脂質検査が1年以内ごとに1回の健診項目に含まれています。40〜74歳の方は、年に1回の特定健診でも脂質を測ります。治療中の方や、ほかにリスクのある方は、医師が別のリズムを決めます。同じ施設で受け続けると、流れが読みやすくなります。