健康診断の血液検査に含まれるもの

会社で受ける定期健康診断の血液検査は、労働安全衛生規則で項目が決められています。貧血検査、肝機能検査、血中脂質検査、血糖検査の4つで、実際には赤血球数とヘモグロビン、AST・ALT・γ-GT、LDLコレステロール・HDLコレステロールと中性脂肪、血糖が測られます。40〜74歳の方が受ける特定健診も、脂質・肝機能・血糖が中心です。

人間ドックでは、項目がさらに広がります。日本人間ドック・予防医療学会は、人間ドックの血液検査として肝臓、腎臓、脂質、糖代謝、血球、感染症の各系統を挙げています。腎臓や電解質などの生化学検査や、白血球・血小板まで含めた血算が加わるため、同じ「血液検査」でも十数行から数十行まで幅があります。

ですから、まず確かめたいのは、自分の検査結果にどのグループが載っているかです。下の表は、よく見かける組み合わせをまとめたものです。各グループには、このサイトに専用のページがあり、何を測るのか、どの順番で読むのかを説明しています。

検査グループ主な項目(結果の表記)見ているもの
血算(血液一般検査)WBC、RBC、Hb、Ht、MCV、PLT赤血球・白血球・血小板と、赤血球の大きさ
生化学検査(電解質・腎臓)Na、K、Cl、BUN、Cr、eGFR、UA体の水分とミネラルのバランス、腎臓のろ過
脂質LDL-C、HDL-C、TG、non-HDL-C動脈硬化の起こりやすさ
肝機能AST、ALT、γ-GT、ALP、T-Bil、Alb肝臓の細胞と、胆汁の流れ
糖代謝空腹時血糖(または随時血糖)、HbA1c今の血糖と、過去1〜2か月の平均
甲状腺TSH、FT4(必要に応じてFT3)甲状腺ホルモンの働き
鉄血清鉄、フェリチン、TIBC体内の鉄の量と蓄え

健康診断の血液検査でわかること

グループごとに読むと、健康診断の血液検査は、体の調子についていくつかの大きな問いに答えてくれます。貧血がないか、血糖が注意の必要な範囲にないか、肝臓や腎臓に負担がかかっていないか、将来の心筋梗塞や脳梗塞のリスクを高める脂質のパターンがないか、といった問いです。

どれも出発点であって、結論ではありません。たとえば糖尿病は、1回の血糖値だけでは診断されません。日本糖尿病学会の基準では、別の日の検査でも再び「糖尿病型」であることを確かめます。ただし、同じ採血で血糖値とHbA1cの両方が糖尿病型なら、その1回で診断されます。

  1. 血算貧血があるかどうかと、赤血球の大きさから見えるその原因の手がかり。白血球や血小板が多すぎないか、少なすぎないか。
  2. 血糖空腹時血糖が126 mg/dL以上、またはHbA1cが6.5%以上なら「糖尿病型」です。空腹時血糖110 mg/dL未満が正常型で、その間は境界型とされます。
  3. 腎臓と肝臓クレアチニンとeGFRは腎臓のろ過の働きを、AST・ALT・γ-GTは肝臓の細胞や胆道への負担を表します。
  4. 将来の心臓と血管のリスク厚生労働省の健診の判定では、LDLコレステロールが180 mg/dL以上、または中性脂肪が500 mg/dL以上なら、早めに医療機関を受診するよう示されています。

健康診断の血液検査でわからないこと

ふつうの血液検査は、がんを見つけるための検査ではありません。米国国立がん研究所は、がんを念頭に作られた腫瘍マーカーでさえ、症状のない人のふるい分けには向かないと説明しています。がんがあっても上がらないことが多く、がん以外の病気でも上がることがあるためです。血算や生化学検査が正常でも、ほとんどのがんについては何も言えません。

頼まれていない項目もわかりません。ビタミンD、ビタミンB12、フェリチン、ホルモン、多くの感染症は、それぞれ別の検査です。脂質の数値は血液の中の物質を測ったもので、血管そのものの状態を写したものではありません。

そして、血液検査が写すのはある朝の1枚の写真です。動画ではありません。医師が読み取ることの多くは、前回までの結果や、検査を受けた理由と比べることから生まれます。

上から順ではなく、グループで読む

役に立つ読み方は、印刷された順番とは違います。まず、検査を受けた理由から始めます。だるさが理由なら、答えを持っているのは血算と鉄の検査で、少しだけ外れたカルシウムはおそらく背景の情報です。次に、各グループをひとまとまりで読みます。ヘモグロビンはMCVやフェリチンと、ALTはASTと、クレアチニンはeGFRと一緒に見ます。

そのうえで、印のついた項目を見ます。問うべきは「外れているか」ではなく「どれだけ外れているか」です。下限が30のフェリチンで、結果が28でも4でも、同じ「L」がつきます。結果用紙の書式は施設ごとに違いますが、読む順番は同じです。項目名、数値、単位、基準範囲、そして印です。印はH・L、「*」、↑↓、太字や色のこともあれば、何もないこともあります。健診の結果では、さらに「基準範囲」「軽度異常」「要再検査」「要精密検査」といった判定区分が添えられます。

健康でも、印が1つや2つつくのは珍しくありません。基準値は健康な人の95%が入る範囲として作られています。裏を返せば、健康な人でも20人に1人は、どの項目でも範囲の外に出ます。項目が20あれば、どこかに印がつくほうが自然です。

最後に、前回の結果があれば比べてください。3年かけて基準範囲の中でじわじわ動いてきた数値のほうが、1回きりの印より多くを語ることがあります。

健康診断の血液検査の前の準備

準備は「健康診断」という名前ではなく、測る項目で決まります。血算は特別な準備がいりません。一方、中性脂肪や血糖は空腹でないと正しく評価できない、と日本人間ドック・予防医療学会は説明しています。日本動脈硬化学会のガイドラインでは、脂質の検査は10時間以上の絶食後の採血が推奨で、水やお茶などカロリーのない飲み物はかまいません。ただし、空腹かどうかわからない随時の採血でも、最初のふるい分けには使えるとしています。くわしくは空腹時の採血のページをご覧ください。

健診機関から届く案内の指示に従ってください。検査室は、その指示どおりに受けたものとして結果を判断します。採血のしかたも結果に影響します。欧州の採血の推奨では、血液が流れ始めたら駆血帯をすぐに外すこと、手を握ったり開いたりを繰り返さないことを求めています。また同学会は、検査の数日前だけ食事を減らしてもHbA1cで普段の状態がわかるので、普段どおりに受けるよう呼びかけています。

健康診断の血液検査はどのくらいの頻度で受ける?

会社員の定期健康診断は、労働安全衛生規則で1年以内ごとに1回と決められています。40〜74歳の方には、加入している医療保険者が行う特定健診が年に1回あります。

ただし、定期健診の貧血検査、肝機能検査、血中脂質検査、血糖検査は、国の基準に基づいて医師が必要ないと認めれば省略できる項目でもあります。それ以外の検査のリズムは、治療中の病気、経過を見る必要のある薬、調べている症状など、あなた自身の事情で決まります。答えるべき問いがないまま毎年項目を増やしても、増えるのは主に印がつく機会です。

健康診断や人間ドックは、本当に役に立つ?

ここは研究の結果がはっきりしている数少ない点で、しかも直感に反します。コクランの系統的レビューは、17のランダム化試験、251,891人のデータをまとめ、大人に一般的な健康診断を勧めることで病気や死亡が減るかを調べました。結果は、あらゆる原因による死亡にも、がんによる死亡にも、ほとんど、あるいはまったく効果がないというもので、確実性の高い根拠に基づいています。心臓病による死亡もおそらく減りません。

増えたのは診断の数です。試験の1つでは、健診を勧められた人は勧められなかった人に比べ、6年間で新しい診断が20%多くつきました。病名はつきましたが、結果は変わりませんでした。

この結論の範囲は狭く、そこが大切です。対象は、症状のない大人に、いくつもの臓器を一度に調べる健診を行う場合です。医師が理由があって指示した検査、すでにある病気の経過観察、症状の原因を調べる検査については、何も言っていません。それらは健診ではなく、答えの決まった問いを持つ検査で、受ける価値は変わりません。

医師に聞きたいこと

要約や1つの数値のスクリーンショットではなく、検査結果そのものを持っていきましょう。単位や基準範囲は施設ごとに違い、ヘモグロビン14 g/dLと140 g/Lは同じ量なのに、数字だけ書き写すと別物に見えます。

次の健診まで待たないほうがよい結果もあります。基準範囲から大きく離れた数値、同じグループのいくつもの項目がそろって動いている場合、発熱や原因のわからないあざ、強まる息切れなど今の体調と合う異常値は、検査を受けた医療機関へ連絡する理由になります。健診で「要精密検査」と判定された場合や、検査機関・医師から連絡があった場合は、その指示に従ってください。

  1. なぜこの検査を?検査を受けた理由がわかれば、どのグループが答えを持ち、どの印が背景の情報なのかが見えてきます。
  2. どれだけ外れている?印のついた数値が境目をわずかに越えただけなのか、大きく離れているのか。その差で何か変わるのかを聞きましょう。
  3. 前と比べて動いた?できれば同じ施設の過去の結果と比べてもらいましょう。測定方法の違いを、体の変化と取り違えずにすみます。
  4. 次はどうする?再検査、別の検査、何もしない。どれも正当な答えで、どれなのかを知っておけば、不安なまま待たずにすみます。