20の判定ではなく、3つの系統
血算(全血球計算、CBC)は、血液の中の赤血球、白血球、血小板の数を数え、大きさなどを測る検査です。日本では「末梢血液一般検査」とも呼ばれ、健康診断でもおなじみです。結果に並ぶほかの項目、たとえばヘモグロビン(Hb)、ヘマトクリット(Ht)、MCVは、3つの系統のうち赤血球をくわしく説明するものです。
つまり12行や20行の結果は、12や20の所見ではありません。3つの問いと、それに答えるための補足です。補足があるからこそ、それぞれの問いに答えられます。
2つのたとえが、系統を区別する助けになります。好中球は最前線の兵士で、真っ先に駆けつける消防士のような存在です。血小板は血液の小さな絆創膏で、パンクしたタイヤをふさぐパッチのような役目をします。
血算と白血球分画(血液像)の違い
血算だけでは、白血球は合計の数しかわかりません。白血球分画(血液像)を加えると、5種類の白血球それぞれの割合や数がわかり、白血球が多い・少ないという結果の理由を考え始めることができます。自動の分析装置が、血算と同時にこの5種類の分類まで出す検査室もあります。
なお、会社の定期健診で法律が求める「貧血検査」は、赤血球数とヘモグロビン(血色素量)です。健診の結果に白血球や血小板が載っていなくても、項目が抜けたわけではありません。種類ごとに役割が違うので、同じ白血球の合計でも、どの種類が増えているかで意味が変わります。
- 好中球いちばん数が多い白血球で、体に入ってきた細菌などを取り込んで溶かします。
- リンパ球2番目に多い白血球です。T細胞は戦いの合図を出したり敵を直接たたいたりし、B細胞は抗体を作ります。
- 単球数は少ないものの、病原体を退治し、免疫の反応を助け、死んだ細胞を片づけます。
- 好酸球と好塩基球数の少ない白血球で、寄生虫から体を守り、アレルギーの反応やぜんそくに関わります。
一緒に読む項目
ヘモグロビンとMCVは、いちばん典型的な組み合わせです。ヘモグロビンが低ければ貧血があり、MCVがその種類を示し始めます。赤血球が小さければ鉄欠乏性貧血や慢性の炎症による貧血、大きければビタミンB12や葉酸の不足、飲酒が考えられます。検査を頼んでいれば、同じ結果に載るフェリチンが、たいてい決め手になります。
日本人間ドック・予防医療学会は、貧血はヘモグロビンで判断するもので、赤血球数やヘマトクリットだけでは決められないとしています。白血球は、合計と内訳の両方で読みます。好中球が押し上げた合計と、リンパ球が押し上げた合計では意味が違い、どちらもそれだけでは診断になりません。
血小板は、平均血小板容積(MPV)という指標と一緒に読むことがあります。MPVは数ではなく、血小板の平均的な大きさを表します。
血算でわかる病気のサイン
血算は、特定の病気を調べる検査というより、全体を広く見渡す最初の検査です。赤血球の項目は貧血や多血症を、白血球の項目は感染症や炎症、血液の病気を、血小板の項目はあざができやすい、血が止まりにくいといった症状の理由を示すことがあります。
考えられる原因は、どちらの方向にも幅があります。白血球が多いときは細菌感染症、炎症、腫瘍などが、少ないときはウイルス感染症、薬へのアレルギー、再生不良性貧血などが考えられます。血小板が多いときは鉄欠乏性貧血など、少ないときは骨髄で作られる量の低下や肝硬変などが挙げられます。だからこそ、合計だけでなく、内訳とほかの系統、検査を受けた理由のほうが大切です。
健康なのに基準範囲外が出る理由
血算は項目が多く、基準値はどれも健康な人の95%が入るように作られています。言い換えれば、健康な人でも20人に1人は、1つの項目で範囲の外に出ます。これだけ項目が並べば、まったく元気な人でもどこかに印がつくほうが自然です。
日々の暮らしも数値を動かします。日本臨床検査専門医会は、もともと白血球が多めの人や少なめの人がいて、かぜをひいたときには増え、一部のウイルス感染では減ると説明しています。ヘマトクリットが高いときは、ストレスや喫煙、水分が足りない状態が影響していることもあります。
喫煙は、見落とされがちな理由です。日本人間ドック・予防医療学会は、たばこを吸う人は白血球が高くなると説明しています。健診を受けた日本人男性11,261人の研究でも、喫煙者は非喫煙者より白血球数が多く、別の研究では本数が多いほど白血球、ヘモグロビン、ヘマトクリットが高くなりました。たばこを吸う人の白血球の印には、感染症より単純な理由があることが少なくありません。
血小板が少ないのに、どこも悪くないとき
血小板の低い印には、採血管の中で起きる見かけの減少が隠れていることがあります。採血管に入っている固まりを防ぐ薬(EDTA)のせいで血小板が管の中で寄り集まり、分析装置が実際より少なく数えてしまう現象で、「EDTA依存性偽性血小板減少」と呼ばれます。
体に害はありませんが、気づかれないと、不要な精密検査につながることがあります。結果が基準範囲を下回っていても、あざや出血がなく元気なら、血液を顕微鏡で確認したり、別の種類の採血管で測り直したりすることで確かめられます。気になるときは、その可能性を医師に聞いてみてください。
血算で受診を考える目安
「外れているか」ではなく「どれだけ外れているか」を問いましょう。血小板の下限が14.5万/µLで結果が14万/µLの場合と、5万/µLの場合では、同じ「L」でもまったく意味が違います。
次に、前回の結果があれば比べてください。少しだけ範囲を外れたまま安定している数値と、初めて同じ値が出た場合とでは、別のものとして考えます。日本人間ドック・予防医療学会の判定では、たとえばヘモグロビンが男性12.0 g/dL以下・女性11.0 g/dL以下、白血球が10.0×10³/µL以上または3.0×10³/µL以下、血小板が9.9万/µL以下は「要精密検査・治療」です。
ふだんの受診より早く相談したいのは、基準範囲から大きく離れた値、同じ結果で赤血球・白血球・血小板がそろって低いなど、いくつかの系統が一緒に動いている場合、そして発熱、原因のわからないあざ、出血を伴う場合です。