短い答え
健康診断の当日は、検査が終わるまでたばこを控えます。日本予防医学協会は当日の喫煙を控えるよう案内し、済生会神奈川県病院もあめやガムと並んでたばこを当日の朝に控えるものとして挙げています。米国の公的情報も、採血前の絶食の間は食事やガムと同じく喫煙を避けるよう求めています。
それより大事なのは、あまり語られない点です。毎日吸っている人は、いくつかの値がもともと吸わない人より高めに出ます。当日の1本より、何年もの喫煙がつくった「ふだんの値」のほうが、結果の読み方に大きく関わります。
何時間前なら吸ってもいい?
国が定めた「何時間前まで」という基準はありません。だからこそ、受診する健診機関の案内に従うのがいちばんです。健診機関の案内では、当日の朝は採血が終わるまで控えるのが一般的です。
慎重にする理由は、1本で血液検査が台なしになるからではありません。検査医学の専門家は、その場の喫煙も長年の喫煙も、食後の体の状態を変える要因に挙げています。空腹時の採血で知りたいのは、直前の1本ではなく、ふだんのあなたの状態です。
- 健診の当日起きてから採血が終わるまで、紙巻きたばこも加熱式も控えます。
- 前日の夜絶食の時間に入ったら控えるのが安全です。案内に指定があればそれに従います。
加熱式たばこ・電子たばこ
健診機関の案内の多くは「たばこ」とだけ書き、加熱式や電子たばこを分けていません。ニコチンを含む点は紙巻きたばこと同じなので、当日は同じように控えるのが慎重な読み方です。迷ったら健診機関に確認しましょう。
加熱式を毎日使っているなら、問診票の喫煙の欄でそれも伝えてください。特定健診では「喫煙あり」が、血圧、脂質、血糖に加えて数えられるリスクの一つになっています。隠すための欄ではなく、結果を正しく読むための情報です。
毎日の喫煙が血球に残すもの
自分の結果を見て、驚く人が多いところです。日本の健診受診者3万7,972人を調べた聖路加国際病院の研究では、現在の喫煙が、白血球の多さともっとも強く結びついた要因でした。好中球、リンパ球、単球、好酸球、好塩基球のどれもが、喫煙者で多くなっていました。
海外の研究でも、健康な喫煙者は吸わない人より白血球、ヘモグロビン、ヘマトクリット、赤血球の平均の大きさが高く、本数が多いほど差が大きくなっていました。本数の多い人ほど、総コレステロール、中性脂肪、LDLが高く、HDLが低いという、よくない方向の脂質も見られました。
極端な例では、米国の血液内科で、ほかの原因を除いたうえで白血球の高値が喫煙によると判断された40人を追跡した報告があります。ほぼ全員で好中球が増えていました。
つまり喫煙者は、どこにも感染症がないのに白血球に「高」の印がつくことがあります。印は正しく、心配は要らないかもしれません。医師はあなたが吸うことを知ったうえでその行を読むはずですし、そうあるべきです。
HbA1cにも影響する?
少しだけ、影響します。糖尿病と診断されていない約3万5千人のデータをまとめた解析では、現在吸っている人のHbA1cは、吸ったことのない人より0.10ポイント高く、空腹時血糖には差がありませんでした。
一人にとっては小さな差ですが、判定の境目の近くにあります。特定保健指導ではHbA1c 5.6%以上がリスクとして数えられます。HbA1cが境目にあって、たばこを吸っているなら、医師に相談する価値があります。
健診でたばこは「バレる」?
直接には分かりません。ふつうの血球検査や生化学検査に、ニコチンを測る項目はありません。測るのは、それを目的とした検査がわざわざ出されたときだけです。
ただ、喫煙は測っている値に跡を残します。白血球が多め、ヘモグロビンが高め、脂質がよくない方向。だからこそ、吸っていることと、おおよその本数を伝えておくと役に立ちます。日本では成人の15.7%が習慣的に喫煙しており、珍しいことではありません。
自分で結果を読むときも同じです。基準範囲は健康な人のデータからつくられ、それでも健康な人の約20人に1人は範囲の外に出ます。基準範囲そのものの意味を知っておくと、喫煙者の白血球の「高」が、主に吸わない人との比較だと分かります。
やめたあと、数値はどれくらいで動くか
日本の同じ研究では、健診を毎年受けた喫煙者1,730人を追跡しました。禁煙した人では白血球と好中球が1年のうちにはっきり下がり、その後2年以上低いまま保たれました。吸い続けた人では変化はありませんでした。
米国の血液内科の報告でも、本数を減らすかやめると白血球が下がり、目に見えて下がるまでの期間は中央値で8週間でした。
逆に言えば、結果をよく見せるために2日だけ吸わないことに意味はありません。当日の朝の禁煙は守る価値がありますが、2日間は作戦になりません。経過を見るなら、印刷された範囲ではなく、前年の自分の結果と比べましょう。