短い答え
絶食を指示されているなら、当日の朝のコーヒーは控えます。砂糖もミルクも入れないブラックでも同じです。済生会神奈川県病院は、検査当日の朝食とあわせて、牛乳、ジュース、コーヒーを控えるよう案内しています。日本のガイドラインが絶食中に認めているのは、水やお茶などカロリーのない水分です。
前日については、多くの健診機関が夕食の締め切りとしている21時ごろまでなら、ふだんどおり飲んでかまいません。絶食の必要がない検査だけの日なら、コーヒーはそもそも問題になりにくいものです。気になるのは理由のほうでしょう。研究の結果は、受付の注意書きが思わせるより複雑です。
ブラックでもだめな理由
砂糖もミルクもなく、カロリーもほとんどない。それなら関係ないはず、と考えるのは自然です。でも問題はカロリーではありません。コーヒーは、体の代謝に何もしない飲み物ではないのです。
健康な男性10人に、食事の1時間前にカフェイン入りかカフェインレスのコーヒーを飲んでもらった試験があります。カフェイン入りのあとは食後の血糖の上がり方が147〜216%大きく、血糖の上がりやすい食事ではインスリンの効きが40%落ちました。別の試験では、糖の飲料の30分前に飲んだコーヒーが、水に比べてインスリンを上げました。
絶食のルールが防ぎたいのは、まさにこれです。空腹時血糖で「ふだんの状態」を見たい朝に、カップの中身が糖の処理を変えてしまうことです。
新しい研究が示したこと
反対の結果を示す小さな研究もあり、紹介しておくのが公平です。2023年の研究では、27人のボランティアからコーヒー1杯の前と1時間後に採血しました。いくつかの値はわずかに動きましたが、ふだんの生化学検査と血球のどれも、臨床的に意味のある変化にはなりませんでした。
それ以前のランダム化試験では、10時間絶食した10人が水かブラックコーヒーを飲み、30分後の中性脂肪と血糖はどちらでも同じでした。
まとめると、ブラックコーヒー1杯がふだんの検査値を動かす幅は、ルールが思わせるほど大きくないかもしれません。ただ、どちらの研究も規模が小さく、検査医学の専門家は、コーヒーを食後の体の状態を変える習慣の一つに数えています。指針が変わるまでは、ルールはそのままです。
コーヒーが関係する検査
いちばん関係するのは空腹時血糖です。絶食はこの検査のためにあり、日本の健診では10時間以上の絶食が前提です。コーヒーの試験で変化が見られたのも、まさに糖の処理でした。
脂質の検査は事情が少し違います。日本の健診ではいまも空腹時の採血が基本ですが、日本動脈硬化学会の2022年版ガイドラインは食後の採血にも中性脂肪175 mg/dLという基準を設けています。脂質の検査を空腹時で受けるなら、コーヒーも絶食に含まれます。
- 空腹時血糖絶食の時間中は、ブラックでもコーヒーは控えます。
- 中性脂肪・コレステロール空腹時で受けるなら控えます。食後の採血なら別の基準で判定されます。
- 血球・肝機能・腎機能食事の影響をほとんど受けない検査で、2023年の研究でもコーヒー1杯の影響は臨床的に問題になりませんでした。
- HbA1c過去1〜2か月の血糖を映すので、当日の1杯は影響しません。
カフェインレス、ミルク、お茶はどうか
カフェインレスは抜け道になりません。先の試験でカフェインレスは比較のための飲み物で、水と同じだと示されたわけではありません。分かったのは、カフェイン入りのほうがカフェインレスより悪いということだけです。
ミルク、砂糖、シロップを入れれば、カロリーが加わって飲み物は食事になります。カフェオレや缶コーヒーも同じです。
お茶は少しややこしいところです。日本のガイドラインは無糖のお茶を空腹時でも認めており、お茶を認める健診機関もあります。一方で緑茶や紅茶にもカフェインは入っており、当日の朝は水と白湯だけにする施設もあります。迷ったら水を選ぶのがいちばん確実です。
コーヒーは何時間前までなら飲めるか
目安は、絶食が始まる時刻までです。前日の夕食を21時ごろまでに済ませるよう案内されているなら、コーヒーも同じ時刻までに。直前の1時間だけ我慢すればよい、というものではありません。
実際には、最後の1杯は前日の夕方から夜、次の1杯は採血のあと、ということになります。朝早い時間の予約をとれば、待つ時間はぐっと短くなります。
絶食の必要がない検査だけの日なら、いつもの1杯を飲んでかまいません。迷ったときは、届いた案内に「コーヒー」の記載があるかを確認してください。
もう飲んでしまったら
採血の前に、受付で伝えてください。済生会神奈川県病院は、当日の朝にコーヒーなどをとった場合、検査を受けられないことがあると案内しています。自分で判断して黙って受けるより、何をいつ、どれくらい飲んだかを伝えるほうが確実です。
伝えた後は、空腹時血糖など一部の検査を別の日にするか、その日に受けられる検査を職員が判断するか、どちらかになるのがふつうです。どちらも、空腹時でないと誰も知らない空腹時血糖よりはずっとましです。
黙って受けてしまうことだけは避けましょう。空腹時のつもりで読まれた血糖は、ない病気を疑わせたり、ある病気を見えなくしたりします。