短い答え

午前の健康診断では、朝ごはんを食べずに受診します。済生会神奈川県病院も日本予防医学協会も、採血や胃の検査がある人には、前日の夕食を21時ごろまでに済ませ、当日の朝食はとらないよう案内しています。

ただし、食事の影響を強く受ける血液検査は少数です。国の特定健診のルールで「空腹時」の条件がついているのは、血糖と中性脂肪の2つだけ。健診全体が朝食抜きになるのは、この2つと、胃の検査や腹部超音波検査のためです。

食事の影響をほとんど受けない検査

健診の血液検査の多くは、朝ごはんで結果がほとんど変わりません。血球の検査は軽い食事でいくつかの値がわずかに動く程度で、絶食は求められていません。HbA1cは過去1〜2か月の血糖を映すので、一回の食事は関係ありません。

肝機能(AST、ALT、γ-GTP)や腎機能(クレアチニン、eGFR)も、ふつうの食事ではほぼ安定しています。もちろん、自分の健診機関の案内が優先です。

甲状腺の検査は絶食こそ要りませんが、時刻には意味があります。2万19件のTSHの結果を調べた研究では、採血の時刻によって、判定が変わるほどTSHが動くことがありました。経過を追うなら、毎回同じくらいの時刻に採血すると比べやすくなります。

  1. 血球(赤血球・白血球・血小板)絶食は不要です。
  2. HbA1c過去1〜2か月の血糖を映すため、朝食の影響を受けません。
  3. 肝機能・腎機能ふつうの食事ではほぼ安定しています。
  4. 甲状腺(TSH)絶食は不要。経過を見るなら毎回同じ時刻が理想です。

絶食が必要な、短いリスト

空腹時血糖が、絶食の主な理由です。日本の健診では前日の夕食からの絶食10時間以上が前提で、食事のあと数分で上がり始める血糖を、ふだんの状態で測るためです。日本糖尿病学会の基準では、空腹時血糖110 mg/dL未満が正常型、126 mg/dL以上が糖尿病型です。

中性脂肪も、空腹時の採血が基本です。LDLコレステロールは計算に中性脂肪を使うことがあるため、国の指針は、食後の採血や中性脂肪が400 mg/dL以上のときは、LDLの代わりにNon-HDLコレステロールで評価してよいとしています。

鉄の検査は、朝で空腹の採血が望ましいとされます。血清鉄は一日の中で変動し、食後に上がるためです。

腎機能や電解質の検査を含め、ここに挙げていない項目に、特定健診のルール上の絶食の条件はありません。

脂質の検査は、どちらの側に移ったか

欧州では2016年に、脂質の検査は絶食なしを標準にしてよいことになりました。ふつうの食事のあと、中性脂肪は最大で約26 mg/dL上がり、LDLコレステロールは約8 mg/dL下がる程度で、食後の値でも心血管の病気の起こりやすさを同じように予測できるからです。

日本は中間の立場です。日本動脈硬化学会の2022年版ガイドラインは10時間以上の絶食を「空腹時」としつつ、食後を含む「随時」の中性脂肪にも175 mg/dL以上という基準を設けました。空腹時でも随時でも、中性脂肪は将来の心臓病や脳梗塞を予測するとしています。

特定健診でも、やむを得ず空腹時以外に採血した場合は、随時中性脂肪で判定してよいとされています。朝ごはんを食べても脂質の検査は受けられますが、判定の物差しが変わる、ということです。

午後の健診なら、朝ごはんはどうするか

午後に受診する健診では、朝食を軽くとれることがあります。南相馬市立総合病院の午後健診は前日の夕食に制限を設けず、当日の朝食は午前7時までに軽食で済ませるよう案内しています。例として食パン1枚、素うどん1人前、ごはん1杯が挙げられ、ジャム、バター、卵、牛乳などは避けるものとされています。

日本予防医学協会の午後受診の案内は、朝7時ごろまでゼリー飲料だけを認めています。施設ごとに違うので、予約時の案内を確認しましょう。

国のルールでは、食事開始から3.5時間以上10時間未満の採血は「随時血糖」として判定できます。午後の健診で朝食をとった場合は、この扱いになると考えてください。

それでも朝食抜きと言われる理由

理由は2つあります。1つ目は、同じ朝に空腹時血糖と中性脂肪を測る人が多いこと。2つ目は、胃のバリウム検査や胃カメラ、腹部超音波検査も、胃が空でないと正しく行えないことです。済生会神奈川県病院は、胃の検査、腹部超音波検査、採血のいずれにも10時間以上の空腹が必要だと案内しています。

受診者ごとに検査の組み合わせが違っても、案内は一通りで済ませたい。それも健診機関が全員に朝食抜きを求める理由の一つです。自分が血液検査だけなら、もっと緩やかでよいかを健診機関に聞いてみる価値はあります。

食べてしまったら、絶食しすぎたら

朝ごはんを食べてしまったら、採血の前に受付で伝えてください。食事開始から3.5時間以上たっていれば随時血糖や随時中性脂肪として判定でき、血球や肝機能はほとんど影響を受けません。胃の検査は受けられないことがあります。

反対に、必要以上に長く我慢する意味もありません。とくに糖尿病の薬やインスリンを使っている人は、長い絶食で血糖が下がりすぎるおそれがあります。いつもの薬の扱いは事前に主治医に確認しましょう。