「要再検査」は比べた結果で、診断ではない
基準値から外れるというのは、あなたの値が、結果の用紙に印刷された基準値より高いか低いかということです。同じ測定方法で測った健康な人と比べた結果であって、病名ではありません。健康診断の「要再検査」も、その比較をもとに「もう一度確かめましょう」と勧めているものです。
日本人間ドック・予防医療学会の判定区分では、Cが「要再検査・生活改善」、Dが「要精密検査・治療」です。Cは時期を決めて同じ検査を受け直し、あわせて生活習慣を見直す段階、Dは医療機関で詳しく調べるか治療を考える段階です。学会は、Cの結果には「何か月後に再検査」と時期をはっきり書き、「経過観察」のようなあいまいな書き方をしないよう求めています。
米国の家庭医療の総説は、基準値から外れる結果の数は、医学的に意味のある結果の数よりはるかに多いと指摘し、高い・低いの表示が患者に必要以上の不安を与えていると述べています。いま不安を感じているなら、それはこの仕組みが働いているからで、あなたの健康についての証拠ではありません。
健康な人でも引っかかる理由
計算すると、項目の多い健診ではほとんどの人が何かに引っかかります。基準値は1項目ごとに健康な人の約20人に1人を外に出すように作られており、項目が増えるほど確率は積み重なります。同じ総説の計算では、20項目の検査で、健康な人のおよそ3人に2人が少なくとも1項目で基準値から外れます。
実際の数字もそれに近く、令和7年の職場の定期健康診断では、受けた人の59.7%に何らかの所見がありました。項目別に見ると、血中脂質の所見がある人は全国で30.7%でした。「健康診断で引っかかる人の割合は?」という問いの答えは、「多数派」です。ただし、自分の印がよくあるほうなのかどうかは印だけではわからず、そのために次の4つの問いがあります。
整理するための4つの問い
印の付いた項目を、自分の数値を見ながら、同じ4つの問いで読んでいきます。
最後の問いには専門的な答えがあります。検査施設は、2回の結果の差がどれくらいあれば、その検査のふだんの日々のゆらぎを超えるかを計算できます。2020年の総説は、連続した結果をこの考え方で読む方法を紹介しています。過去の結果があるなら、今回の変化がそれより大きいかを尋ねてみる価値があります。
- どれくらい外れているか下限30に対してフェリチン28と、フェリチン4とでは、同じ「L」が付くことがあります。外れ幅にこそ多くの情報があります。
- どちら向きか同じ項目でも、高いときと低いときでは考えられる理由が違います。向きは印と同じくらい大切です。
- ほかの項目と合わせるとヘモグロビンはMCVやフェリチンと、ALTはASTやγ-GTと、クレアチニンはeGFRと読みます。同じ向きの3項目と、1項目だけとは違います。
- 前回と比べると前回の自分の結果は、手元にある最良の比較相手です。何年も同じくらい外れている値と、初めて外れた値とでは意味が違います。
基準値から外れる原因
原因の多くは病気と関係ありません。まず準備です。人間ドック学会の判定区分は、血糖と脂質について空腹時の採血を前提にしています。朝食をとってから採血した空腹時血糖は高く出ます。欧州の採血の勧告も、絶食を含む検査前の準備を正しい結果の一部としています。
次に体の使い方です。日本の共用基準範囲を作るときには、採血前3日間は激しい運動を控え、座って20分以上休んでから採血しました。激しい運動でAST、CKなどが上がり、立ったままだとたんぱく質などの濃度が座ったときより5〜10%高くなるからです。時刻も影響します。TSHは午後から夜にかけて早朝よりはっきり低くなり、血清鉄は朝に高く夕方に低くなります。喫煙する健康な人は、吸わない人より白血球やヘモグロビンが高い傾向があります。
検査施設そのものの違いもあります。基準値は測定方法や機器、対象となる集団で変わります。自分の値を別の施設の基準値やネットの一覧と比べてしまうのは、いちばん起こりやすい間違いのひとつです。
要再検査と言われたら、どうするか
検査項目の名前で検索するところから始めないでください。まず、どの判定だったかを確かめます。Cなら用紙に書かれた時期に再検査を、Dなら早めに医療機関を受診します。いくつかの項目が並んでいるときは、内科でまとめて相談すると、どれから手をつけるか整理してもらえます。
4つの問いを自分の数値で書き出し、値を動かした可能性のあることも一緒に持っていきましょう。採血前の食事、採血の時刻、最近の病気、運動、喫煙、新しく飲み始めた薬やサプリメントなどです。少し外れただけの値なら、同じ条件でもう一度測るのが妥当かどうかを尋ねるのがよいでしょう。
念のためにと、項目の多い検査を自分で追加するのはおすすめしません。成人を対象にした一般的な健康診断の研究をまとめたコクランレビューでは、死亡率への効果はほとんど、あるいはまったく見られず、項目が1つ増えるごとに、説明が必要な印が付く機会も1つ増えます。
早めに受診したほうがよいとき
次の回の健診まで待たず、早めに相談したほうがよい場合があります。基準値から大きく外れた値、同じ向きに動いているいくつかの関連項目、前回からのはっきりした変化、そして気になる症状と一緒に出た異常値です。D判定はこれにあたります。
最も危険な値については、仕組みがあなた任せになっていません。命に関わるほど外れた値(パニック値)について、日本臨床検査医学会は、検査部門から指示した医師へ確実に第一報を届ける体制をつくるよう提言しています。検査施設や医師から結果について直接連絡があったなら、それは別の状況です。調べるより先に、電話をしてください。
いまは説明を受ける前に結果を見る人も増えました。結果をオンラインで見た米国の患者8,139人の調査では、異常値があった人の16.5%が、医師から説明を受ける前に読んだことで不安が増したと答えています。もしあなたがそうなら、上の4つの問いが、待つ時間のいちばん役に立つ使い方です。