HとLが伝えていること

血液検査の結果で、Hは値が横に印刷された基準値より高いこと、Lは低いことを示します。この印はコンピューターが2つの数字、つまりあなたの値と基準値を比べて付けるもので、それ以上のことは何も言っていません。

医療データをやりとりするための国際規格HL7も、Hを基準範囲の上限より上の結果、Lを下限より下の結果と定義しています。用紙によって「高」「低」と書くもの、印だけの列を設けるもの、値の前や後ろに付けるものがありますが、読む順番は同じです。検査項目、値、単位、基準値、印です。

この自動化が印の便利さであり、限界でもあります。印が知っているのは値と基準値だけです。飲んでいる薬、空腹で受けたかどうか、喫煙、採血の時刻、検査を受けた理由は知りません。同じ行を読む医師は、システムが持っていなかった情報をすべて加えて判断します。

健康診断の判定区分A〜E

健康診断や人間ドックでは、HとLのほかに、項目ごとの判定がアルファベットで付きます。日本人間ドック・予防医療学会の判定区分は次の5段階です。以前のD1(要治療)とD2(要精密検査)は、精密検査にするか治療にするかは紹介先が決めることから、Dにまとめられました。

学会のホームページでは一般向けに、Aを「基準範囲」、BとCをまとめて「要注意」、Dを「異常」の3区分で示しています。また学会は、聴力1項目だけがDの人と、10項目がCの人を同じ物差しで比べられないことから、結果報告書に総合判定を書くことを推奨していません。総合判定が書かれた用紙でも、項目ごとの判定を見ることが大切です。

  1. A 異常なし今回の検査の範囲では異常を認めない段階です。
  2. B 軽度異常基準からわずかに外れている段階です。
  3. C 要再検査・生活改善時期を決めて再検査を受け、生活習慣を見直す段階です。用紙には「何か月後」と書かれるのが原則です。
  4. D 要精密検査・治療医療機関で詳しく調べるか、治療を考える段階です。早めの受診が勧められます。

E判定と、施設ごとの違い

5つめのEは「治療中」です。学会のQ&Aによると、薬で治療している項目は、値が良くても悪くてもEにします。薬のおかげで良い値になっているのにAにすると、自己判断で薬をやめてしまうおそれがあるからです。

判定の付け方は施設によって違います。学会自身が、全国の結果票を見ると判定の仕方に差があると述べています。また、同じ値でも物差しが違えば扱いが変わります。たとえば女性のヘモグロビン11.8 g/dLは、病院でよく使われる共用基準範囲(11.6〜14.8)では印が付きませんが、人間ドック学会の判定区分(「異常なし」は12.1〜14.5)ではCになります。

「*」、太字、赤字、矢印

検査施設によって、同じ比較結果が「*」の印、太字や赤字の数値、上向き・下向きの矢印(↑↓)、「高」「低」の文字、記号だけの列などで示されます。印を付けず、値と基準値を自分で見比べるようになっている用紙もあります。

どの書き方がより重いということはありません。どれも同じ比較を表す表記の違いです。色はかえって誤解を招くこともあり、39件の研究をまとめた2026年のシステマティックレビューでは、オンラインの結果画面の色などの目印が、わずかなずれを実際より深刻に見せる一方で、本当に大切な所見をうまく伝えていないことがありました。

命に関わるほど外れた値は、ふつうの印とは別に扱われます。国際規格ではHH・LLのような記号があり、日本臨床検査医学会は、こうした値(パニック値)を検査部門から指示した医師に確実に第一報で伝える体制を提言しています。あなたが見つけるのを待つ仕組みではありません。

印は外れ幅を教えてくれない

印について知っておくといちばん役に立つことです。基準値をわずかに超えた値も、何倍も超えた値も、同じ文字が付きます。

下限15.8万/µLに対して血小板14.5万/µLも、5万/µLも、どちらも「L」です。下限に少し届かないフェリチンと、ほとんどゼロに近いフェリチンも、どちらも「L」です。印だけを見れば同じに見える2つの結果が、まったく違う状況を表しています。

ですから、印を見たときの最初の問いは、文字の意味ではありません。値がどれくらい外れているかです。これは同じ行の2つの数字から自分で引き算でき、そのうえで、ヘモグロビンとMCVのように隣の関連項目が同じ傾向かを確かめます。

なぜこんなに印が付くのか

基準値は、健康な人の約20人に1人がひとつの検査で外れるように作られています。米国の家庭医療の2025年の総説の計算では、20項目の検査で健康な人のおよそ3人に2人が少なくとも1項目に印が付きます。外れていることと、具合が悪いことは同じではありません。

人がいちばん迷うのは、基準値ぎりぎりの値です。先の2026年のレビューでは、患者は結果をすぐ見られることを歓迎する一方で、ぎりぎりの値の意味や、受診が必要かどうかを判断するのが難しく、多くの人が誰かが結果を確認したかを医療機関に問い合わせていました。

HやLを見たときにすること

いまは医師より先に結果を見る人も増えました。米国の患者8,139人の調査では、異常値があった人の16.5%が先に読んだことで不安が増したと答えましたが、それでもほとんどの人は、結果をすぐ受け取るほうを選んでいました。

外れ幅、隣の項目、自分の過去の結果の順に見ていきましょう。どれくらい外れているか、関連する項目は同じ傾向か、前回も印が付いていたか。採血の時刻から新しい薬まで、値を動かした可能性のあることを書き留め、自分の場合にその印が何を意味するかを医師に尋ねてください。

印がもっと役に立つためには

2025年の総説は、結果の用紙は文字の印にとどまらず、意味を平易な言葉で示すべきだと述べています。すぐに心配はいらない、次の受診で相談する、早めに医師に連絡する、のどれかです。健診のA〜E判定は、その方向に一歩進んだ仕組みといえます。

値を基準範囲の横棒の上に示すのも助けになります。18件の研究をまとめた2024年のレビューでは、横棒で示すと、数字と範囲だけのときより理解が深まり、ネットで調べたり医師に問い合わせたりする人が減りました。そうした表示が広まるまでは、印は比較が行われたことを教えてくれるだけで、それが問題かどうかを決めるのは、あなたと医師です。